ブッシュ政権の二期八年はこのような感じで後世に語られるだろう。
大義もなく仕掛けたイラク戦争は泥沼化、大幅減税や戦費の大盤振る舞いで財政にドデカい風穴を開け、極めつけはサブプライム・ローンに端を発する大不況を全世界にばら撒いて、世界経済を同時にメルトダウンさせるという悪夢のような所業をやり尽くした、と。
そして、このような状況を引き継いで国家元首となったバラク・フセイン・オバマを見ているとなんだか、地球に接近する小惑星(隕石?)を破壊するために掘削機と爆薬を持って闘いを挑む、アルマゲドンのブルース・ウィリスに思えてしかたないのは僕だけであろうか?(勿論、ここは反語です。疑問形じゃありません。)
・・・・・と、くだらない事を考えていたら、越智道雄と町山智浩の共著、オバマ・ショックにはこう書かれているじゃありませんか。
ぼくは「スーパーマン」のことをちょっと考えました。「スーパーマン」の原作者(ジェリー・シーゲル)はユダヤ系ですが、あれは移民の話なんですよね。生まれた星が爆発しちゃって、モーゼみたいにゆりかごに入れられて地球へ流れてきたのをカンザスのアメリカ人に拾われる。
で、クラーク・ケントというWASPの名前をつけられて、アメリカ人になろうとする。スーパーマンは何のために戦うかというと、「真実と正義とアメリカン・ウェイを守るため」なんですよ(笑)。一切のコンテクストを失ってアメリカに来て、何かに化ける。たしかに、オバマと似ていますね。
うん、僕の妄想も当たらずとも遠からずな気がしないでもない。そして、本書はオバマという人物に伏流する多重性をこのように評しているので、これも引用してみよう。
オバマという一個人の背後には、ありとあらゆるバックグラウンドが
存在することが分かりますね。だから、オバマをひと言で表現するなら
「絶対的アウトサイダー」ということになると思うんです。
人種、階級、宗教、コミュニティ、家族関係などあらゆる側面で、
どこにも帰属してこなかった、あるいは帰属できなかった人ですね。
逆に言えば、どこにでも帰属するとも言えます。
演説でもそのことを強調しています。
さまざまなアメリカを内包する自分は、
バラバラになったアメリカ再統合の象徴だと。
このオバマ=スーパーマン説と絶対的アウトサイダー説から、この国家の存亡を賭けた戦いの命運をその双肩に託されるという重責を担う時にこそ、オバマという無国籍的で多人種的な出自を持つ人物が、自らのアイデンティティを確立し得たのかもしれない、という浅い深読み(どっちだ?)をしてみたり。
その他にも、本書はオバマ=宇宙人説やオバマ=弥勒菩薩説などの今まで誰も開陳しなかったような興味深い視点を提供してくれたります。
後は、オバマを歴代の大統領との関係からどのように位置付けられるか、といった話やアメリカの成立過程、共和党、民主党の歴史、ボーア戦争のゲリラ戦で覇権国家の地位を失墜させていったイギリスや、過去のスペインやオランダのように金融投資型の経済へとスタイルが移行したアメリカの現状は、かつての覇権国家崩壊の様相と酷似しているといった話、家を持つことがアメリカン・ドリームの象徴になったのにはどのような歴史的意図があるのかといった話や、ハリウッドと文化の話など、アメリカの歴史から文化まで、読みどころ満載。
最近やたらと出版されている町山本の中でも手に取り易い一冊なのではないでしょうか。新書だし。