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会計は、コストをどこまで減らせるのか?

双子の弟は、なぜだか会計学と経済学にちょっぴり精通しております。
特に、公認会計士であり、骨太かつ毒舌で知られる著作群で有名な高田直芳氏がお気に入りなんだそうです。今回の一冊は『会計は、コストをどこまで減らせるのか?』


会計は、コストをどこまで減らせるのか?
会計は、コストをどこまで減らせるのか? 高田 直芳

日本実業出版社 2008-07-10
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本書を一読すると、コンビニ業界のフランチャイズ契約は、さながら会計詐欺だ!ということがよーーーく分かります。会計フォーマットを恣意的にいじくると、フランチャイズ側はコンビニ一店舗あたり年間約240万円ほど余分にロイヤリティ収入が得られるそうな・・・。


会計のルールを知らないがために、こんなところでもボラれてるんだなあ。
(以下の内容は、弟が書きました。・・・ところどころ難解)
 


2009年5月6日の朝日新聞朝刊の一面に、セブン・イレブンの独禁法違反容疑についての記事が載っていた。以下にその嫌疑の内容を引用する。

セブン・イレブンジャパン本部がフランチャイズ加盟店に対し、販売期限が迫った弁当などの商品を値引き販売しないように圧力をかけていたとして、公正取引委員会が昨年10月以降、独占禁止法違反の疑いで調査している。


契約では、売れ残り廃棄は全て加盟店負担となるため、店の経営に及ぼす影響が大きい。同社は「見切り販売の制限はしていない」と容疑を否認している。


ちなみにこれも情報源は同記事であるが、一ヶ月当たり各店舗が負担する廃棄コストは少なく見積もっても一日の売上高に相当するそうである。つまり、各店舗の一日平均売上が40万円とすると、一ヶ月の廃棄コストも40万円程度発生し、コンビニは全国で約4,5000店あるので、年間におけるコンビニ業界全体の廃棄コストは優に1,000億円を超えるそうである。




通常、権利や商標、ノウハウなどを提供する側をフランチャイザー(本部)と呼び、受ける側をフランチャイジー(加盟者・加盟店)と呼ぶ。今回の事例に当て嵌めると、セブンイレブン・ジャパン本社がフランチャイザーで、コンビニ加盟店がフランチャイジーである。




このフランチャイジーである各コンビニ加盟店が、廃棄コストの負担を承服した上で、定額販売の強制という価格統制をも承服せざるを得ない、というフランチャイザー・フランチャイジー間の明らかなパワーバランスの非対称性の一端には、会計知に疎い人種の誤認を促す損益計算書の仕組みがある。




そこで、コンビニ業界の基本フォーマットである損益計算書にはどのような仕掛けが隠されているのかを、架空の損益計算書を用いて具体的に例示している箇所があるので、以下に引用しよう。


コンビニ業界の裏側・損益計算書コンビニ業界の裏側・損益計算書
緑色で囲ってあるのですぐに気が付くと思うが、売上原価の内訳科目及び営業費の内訳科目として、商品廃棄ロスが二度も登場し、しかも減算科目と加算科目と正負が逆転して登場する、という点に気付くのが、仕掛けに嵌らない為の第一歩。



第二歩目は本部へのロイヤリティが、粗利益に特定のパーセンテージを乗算する事によって算出されている点に着目できるか否か。これに着目できれば、売上高?売上原価=粗利益であるから、フランチャイザーは売上原価を圧縮させて、粗利を過大に表示するインセンティブに駆られるだろう事も予想の範疇だろう。



そのような視点で売上原価の内訳科目をもう一度眺めてみると、当期商品仕入高を商品廃棄ロスの減算により圧縮して、圧縮によりバランスが崩れた分を営業費の内訳科目として再登場させてバランスを取ったんだろうな、と理解出来るだろう。



ちなみに、これをT勘定にしてみれば容易に理解可能であり、これを丹念に読み解けば、無理矢理挿入した貸方の商品廃棄ロスを当期商品仕入高に潜り込ませて相殺し、相手方である借方の商品廃棄ロスはそ知らぬ顔で、営業費勘定に付け替える、というプロセスを経て、売上原価を圧縮したのだな、という事が分かる。



本部へ支払うべきロイヤリティは粗利益の60%であり、損益計算書の構造を弄繰り回すことによって売上原価を400万円圧縮し、粗利益を400万円過大に算定したのだから、本部がコンビニ業界特有の損益計算書フォーマットを駆使して捻り出した超過収益は400万円×60%=240万円。



これはあくまでも一店舗当たりであり、セブン・イレブンは2009年2月現在、12,298店舗あるそうなので、仮に全ての店舗がフランチャイズ契約を締結していたとしたら、特殊フォーマットの損益計算書により稼得されるであろう超過収益は概算で、240万円/店舗×12,298店舗=295億1,520万円。



つまり、損益計算書の構造にちょいとばかり手心を加えただけで、商品廃棄ロスをフランチャイジー側に転嫁しつつ、ロイヤリティを通常よりも多めに貰えるわけだ。という事は、セブン・イレブンだけでなく業界他社も同様のフォーマットの損益計算書を用いた契約を行っているとすれば、前述の「年間におけるコンビニ業界全体の廃棄コストは優に1,000億円を超えるそうである」とは結局、フランチャイザーが各コンビニ加盟店から巻き上げた金額の総額をも意味している、という結論に至るのだろう。



フランチャイズは現在の荘園領主と小作人の関係に限りなく近い。本書で敬愛する会計マスター・高田直芳氏はそう語っていた。契約書の内容を吟味出来る知識が無ければ、ロイヤリティや商品廃棄コストの仕組みにどのような問題があるのか分からない。



安易な気持ちで脱サラし、コンビニ店主へと転身しても現実はそう甘くない。損益計算書の構造から、廃棄コスト負担のカラクリが透けて見える。魅力的な甘言に騙される事無く、その裏に隠された意図を暴き出す。フランチャイザーの価格統制とフランチャイジーの廃棄コスト負担の問題から得られる教訓は、やっぱり会計学って大切だ、ってコトだろう。



もったいないから食べ物の廃棄は止めるべきだというもっともな正論が罷り通らない、複雑に思惑が入り乱れた世界が存在する。まさに、現実社会における実在のケースから学ぶ、不都合な真実。
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